log²(1-x)の冪級数展開

表題の展開係数は調和数を用いて表せることを紹介する。
東京大学2005年前期大問1と本質的には同じ問題である。

f(x):=log2(1x)と定め、原点を中心とした冪級数を求める。収束性などを無視すれば形式的に、 f(x)=n=0f(n)(0)n!xn であるから、f(n)(0)が求まればよい。

まず、nN2f(n)(x)=2(n1)!(1x)n(Hn1log(1x))()となることを数学的帰納法で示す。
但し、Hnは調和数で、 Hn:=k=1n1kである。

f(x)を順に微分していくと、 f(1)(x)=2log(1x)1x f(2)(x)=2(1x)2(1log(1x)) であり、n=2で成立。(f(1)(0)=0も分かる)

Nnで成立しているとする。
すると、

    f(n+1)(x)=ddx{2(n1)!(1x)n(Hn1log(1x))}=2(n1)!(1x)2n{11x(1x)n+n(1x)n1(Hn1log(1x)}=2(n1)!(1x)2nn(1x)n1(Hn1+1nlog(1x))=2n!(1x)n+1(Hnlog(1x))
であるから、数学的帰納法により()は示された。

したがって、x=0とすれば、 f(n)(0)=2(n1)!Hn1であることがわかるので、f(x)=log2(1x)の冪級数展開は、
    log2(1x)=0+01!x+n=22(n1)!Hn1n!xn=2xn=1Hnn+1xn
を得る。

尚、東京大学2005年前期大問1では、 f(x):=logxx として、 f(n)(x)=an+bnlogxxn+1 を満たす数列{an},{bn}が存在することを示し、漸化式から{an},{bn}を決定させる問題となっていた。

ある積分値を求める際にこの展開が有用であるので予め紹介した。

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