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万有引力の一次元問題

万有引力の働く二物体の運動を調べる。 衝突するまでに掛かる時間や、途中の運動の様子を運動方程式から解析的に求める。 質量\(m,M\)の質点が\(t=0\)で距離\(R_0\)だけ離れて静止していたとする。この二物体には互いに万有引力のみが働き、その他の力は働かないものとする。また、万有引力定数を\(G\)とする。 この二物体は直線上で運動するから、位置をそれぞれ\(x,X\)とし、\(x(0)=R_0,X(0)=0,\dot{x}(0)=\dot{X}(0)=0\)とすれば運動方程式は、 \begin{align} \begin{cases} m\ddot{x}&=-\dfrac{GMm}{(x-X)^2}\\ M\ddot{X}&=\dfrac{GMm}{(x-X)^2} \end{cases} \end{align} となる。(但し、ドットは時間微分を表す。) 二式を重心運動と相対運動に分けると、 \begin{align} \dfrac{d}{dt}\left(m\dot{x}+M\dot{X}\right)&=0\\ \dfrac{d^2}{dt^2}\left(x-X\right)&=-\dfrac{G(M+m)}{(x-X)^2} \end{align} となる。 第一式を初期条件に注意して\(0\)から\(t\)で定積分すると、 \begin{align} m\left(\dot{x}(t)-\dot{x}(0)\right)+M\left(\dot{X}(t)-\dot{X}(0)\right)=0\\ m\dot{x}(t)+M\dot{X}(t)=0 \end{align} であり、更に同じ区間で定積分すると、 \begin{align} m\left(x(t)-x(0)\right)+M\left(X(t)-X(0)\right)=0\\ mx(t)+MX(t)=mR_0 \end{align} を得る。 第二式で\(R:=x-X\)と定義すると、\(R(0)=R_0,\dot{R}(0)=0\)であり、 \begin{align} \ddot{R}=-\dfrac{G(M+m)}{

ポッホハマー記号と多項式

無限級数を超幾何級数で表すには、nの多項式をポッホハマー記号を用いて書き直す手続きが必要である。 今回は、ガンマ関数を経由して多項式をポッホハマー記号で表す方法を紹介する。 ポッホハマー(Pochhammer)記号 \(a\in\mathbb{C},n\in\mathbb{Z}\)に対し、 \begin{align}(a)_n:=\dfrac{\Gamma(a+n)}{\Gamma(a)}\end{align}で定める。 \(n+a\)をポッホハマー記号で表す。 ガンマ関数の性質 \begin{align}z\cdot\Gamma(z)=\Gamma(z+1)\end{align} を用いて多項式をうまくポッホハマー記号だけで表したい。そこで分母分子に\(\Gamma(n+a)\)を掛けてみると、 \begin{align} n+a=&(n+a)\cdot\dfrac{\Gamma(n+a)}{\Gamma(n+a)}\\ =&\dfrac{\Gamma(n+a+1)}{\Gamma(n+a)}\\ =&\dfrac{\Gamma(n+a+1)}{\Gamma(a+1)}\cdot\dfrac{\Gamma(a)}{\Gamma(n+a)}\cdot\dfrac{\Gamma(a+1)}{\Gamma(a)}\\ =&\dfrac{(a+1)_n}{(a)_n}\cdot\dfrac{\Gamma(a+1)}{\Gamma(a)}\\ =&a\cdot \dfrac{(a+1)_n}{(a)_n} \end{align} を得る。 これを用いると、無限級数を超幾何級数で表せて、そこから一般化出来たり、様々な変換公式を利用することが出来ることがある。 Tweet

log²(1-x)の冪級数展開

表題の展開係数は調和数を用いて表せることを紹介する。 東京大学2005年前期大問1と本質的には同じ問題である。 \(f(x):=\log ^2(1-x)\)と定め、原点を中心とした冪級数を求める。収束性などを無視すれば形式的に、 \begin{align}f(x)=\sum_{n=0}^\infty \dfrac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n\end{align} であるから、\(f^{(n)}(0)\)が求まればよい。 まず、\(\forall n\in\mathbb{N}_{\geq 2}\)で \begin{align}f^{(n)}(x)= \dfrac{2(n-1)!}{(1-x)^n}\left(H_{n-1}-\log(1-x)\right)\cdots(\ast)\end{align}となることを数学的帰納法で示す。 但し、\(H_n\)は調和数で、 \begin{align}H_n:=\sum_{k=1}^n \dfrac{1}{k}\end{align}である。 \(f(x)\)を順に微分していくと、 \begin{align}f^{(1)}(x)&=-2\cdot\dfrac{\log (1-x)}{1-x}\\ \ f^{(2)}(x)&=\dfrac{2}{(1-x)^2}\left(1-\log(1-x)\right)\end{align} であり、\(n=2\)で成立。(\(f^{(1)}(0)=0\)も分かる) \(\mathbb{N}_{\leq n}\)で成立しているとする。 すると、 \begin{align} &f^{(n+1)}(x)\\ &=\dfrac{d}{dx}\left\{\dfrac{2(n-1)!}{(1-x)^n}\left(H_{n-1}-\log(1-x)\right)\right\}\\ &=\dfrac{2(n-1)!}{(1-x)^{2n}}\left\{\dfrac{1}{1-x}(1-x)^n+n(1-x)^{n-1}(H_{n-1}-\log(1-x)\right\}\\ &=\dfrac{2(n-1)!}{(1-x)^{

ジョルダン標準形(1) : ジョルダン細胞と冪零行列

このシリーズでは、ジョルダン標準形について扱う。 今回はジョルダン細胞を定義し、その累乗を求めるための冪零行列について紹介する。 ジョルダン細胞 \(\lambda\in\mathbb{C}\)を用いて\(n\)正方行列のジョルダン細胞を以下で定義する。 \begin{align} {J_n}(\lambda):=&[\lambda\delta_{i,j}+\delta_{i+1,j}]\\ =&\lambda I_n+{J_n}(0) \end{align} 但し、\(I_n\)は\(n\)次単位行列、\(\delta_{i,j}\)はクロネッカーのデルタである。 定理1.1 任意の\(m\in\mathbb{N}\)に対して、\({J_n}^m (0)=[\delta_{i+m,j}]\)である。\(\cdots (\ast)\) 証明 \(m=1\)のとき、定義そのものから\({J_n}^1 (0)={J_n}(0)=[\delta_{i+1,j}]\)であるから成立。 \(\mathbb{N}_{\leq m}\)で\((\ast)\)が成立しているとすると、 \begin{align} {J_n}^{m+1}(0)&={J_n}^1(0){J_n}^m(0)=[\delta_{i+1,j} ] [ \delta_{i+m,j}]\\ &=\left[\sum_{l=1}^n \delta_{i+1,l}\cdot\delta_{l+m,j}\right] \end{align} ここで、和に\(0\)でない項があるとしたら、\(i+1=l,\ l+m=j\)でなければならないので、\(i+m+1=j\)の項のみ残る。 したがってこの和はクロネッカーのデルタを使って\(\delta_{i+m+1,j}\)と書けるので、\(m+1\)でも成立し、数学的帰納法により\((\ast)\)は示された。 冪零行列 \(n\)次正方行列\(N\)に、\(m\in\mathbb{N}\)があって、 \begin{align}N^m=O\end{align} が成立するとき、\(N\)は冪