代数学の基本定理(Rouchéの定理を用いた証明)



定義(α点)

αCに対し, f(x)=αとなる点をα点と定義する. これはg(x):=f(x)αの零点であり,この位数(Laurent展開の最小次数)をα点の位数と定義する.
また, fα点の個数をn(α,f)と定義する.
更に, α=のときは極の個数を表すことにする.


Rouchéの定理

単一閉曲線Cで囲まれた領域をDCとし, f(x),g(x)DCで正則で, C上では|f(x)|>|g(x)|を満たすものとする.
このとき, D内でのf(x)f(x)+g(x)の零点の個数は等しい.

証明

C上で |f(x)|>|g(x)|0|f(x)+g(x)||f(x)||g(x)|>0 であり, f(x)f(x)+g(x)C上に零点を持たないから, h(x):=1+g(x)f(x) と置くと, |h(x)1|=|g(x)f(x)|<1 つまり, h(C)D(1,1)であり, h(C)は原点を回らない.
これにより,偏角の原理から, n(0,h)=12πiCh(x)h(x)dx=0 であり, (f(x)+g(x))f(x)+g(x)=(h(x)f(x))h(x)f(x)=f(x)f(x)+h(x)h(x) である.
したがって,偏角の原理により, n(0,f+g)=n(0,f)+n(0,h)=n(0,f) となるから題意は示された.



代数学の基本定理

複素係数n次方程式は重複度を含めてn個の複素数解を持つ.

証明

c1,,cnCを用いてn次方程式を xn+c1xn1++cn=0 とする.
(最高次の係数は0ではないので必ずこの形に帰着できる.)
RRを, R>1+|c1|++|cn| を満たすように取ると, |x|=Rのとき,
    |xn|=Rn>(1+|c1|++|cn|)Rn1|c1|Rn1++|cn||c1xn1++cn|
ここで, Rouchéの定理より, |x|<Rにおけるxn+c1xn1++cnの零点の個数はxnの零点の数nに等しい.


参考:相川弘明『複素関数入門』



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